三軸修正法黎明期
「これからまくタネ」 11〜15
池上悟朗


「これからまくタネ」は、演出上動画を組み込んでおります
ご覧になる方の環境によっては、「かなり重い」場合もあると思われますがご了承下さい。


「これからまくタネ」 11
「いじめっこ」

私は、がちゃがちゃと動く機械が大好きなので芝刈りより工作が沢山したかったのです。
小遣いが実質0円なので、学校の行き帰りに道ばたからゴミになっている針金やネジなんかを拾ってきて大事に撫でて過ごしました。拾った針金を端から何度もちぎれるまで曲げて観察したりして結構遊べるんですが、その感性は今ちゃんと仕事に役立っていますけどその時はなんだか一寸みじめでした。
意識だけは一流のつもりで誇り高くしていないとならないから随分ちぐはぐです。
母からの話だったかその頃父の会社に入社してきた人に「自分がいくら給料が欲しいのか自己申告しろ!」と希望額を言わせて、前号で私が書いた通りのやり方でいじめて何人か泣かせてしまったと聞きました。
それはそうなるのが「普通」ですよね。でも泣いちゃった人たちは入社するのをやめちゃえばいいんですけど大きないじめっこが父だった場合は逃げられない息子はどうしたらよかったんだろう?
でもそんな父の洗礼を受けて、それが良くて入社して働いてくれた人も何人もいたんですよ。世の中いろいろですね。でも今は「怒られるのが好きって人もいるかもな。」と考えられるようになりました。
お化け屋敷に代わってもしそんなアトラクションが流行っても僕は絶対行きません。

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「これからまくタネ」 12
「友達」

父が恐ろしいですからなかなか友達を家に呼ぶ何て出来ません。でもたまたま学校帰り に僕の家に寄っていく友達がいるでしょ。その後で「一流になりたいなら変なやつとは つき合うな!」。やっと家に遊びに来てくれた子が帰った後で「あいつはなんだ!」 もう二度とつれてくるなと言われるんです。そういう友達には申し訳なくて涙が出ました。
あんまり「成功するには」とか「一流を目指すには」とか言われるので、「そんな風に なりたくないよ」とひとこと言ったらもう大変でした。「僕ってバカだ。」もう二度と 思った通りのことなんか言わないゾ!どんなに長く怒られてもただ聞いているだけにし ようと心に決めたんですけど、だんまりもあまり良くない。父の質問に僕が何か答える まで妹と弟がご飯も食べられずに隣の部屋で声をひそめて震えてるんですから。
どっちみち父の根気が尽きるまで責められるんです。もうどうしたらいいのか分からな いよ。これだけ四六時中怒られると、なんだか目の前に起きていることが他人の事みた いに思えてくることがあるんですよね。そう、理不尽に愛想が尽きたので、怒られるの は抜け殻にやらせておいて本当の僕自身が逃げる場所を心の中に無意識に用意し始めた んです。
パーマンのコピーロボット知ってますか?ドラえもんにも似たような道具があったかな?

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「これからまくタネ」 13
「連帯責任」

父はどうしてそんなに怒れるのか?
もうこうなると不思議としか思えなくなってきます。
兄弟3人がひとつのチームで、父の期待にそぐわないことが起きると長男の私の責任です。妹や弟の代わりに僕が叩かれたり説教されたりするのです。父は妹や弟を殴ってでもチームとして性能を発揮するように強く求めてくる。それがリーダーシップだということですが。
そんなー!自分が大嫌いなことをどうして妹や弟に出来ますか?と言うわけで妹と弟にはほとんど一言も何も伝えず、当然与えられた仕事なり課題がうまく消化出来ないので、またまた黙って叱られる事になるわけです。
連帯責任はなんと母にも及んでいて、僕が怒られると一緒に母が怒鳴られるんです。家族と言うより上官とその部下が4人という関係です。悪いことをしたから怒られるんじゃなくて、黙って怒られているから又怒られるの悪循環。
でも気弱に生まれついた私のこと、実は最初からどこかに父が積極的に気の利いたことでも言えば助かるとか、突破口みたいなものを用意してあったかもしれないのですが残念ながら「全然」見えなかったし、全く気づかなかったし、皆目見当がつかなかったなー、と父に話すと「そう書いといてくれよ!」だって。
なんだやっぱりただ怒られているしか無かったのか。

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「これからまくタネ」 14
「びんた」

兄弟3人横一列に並んでビンタを喰らったことが何度かあります。
妹なんか女なのになんでビンタなのか...可愛そうに。父のビンタにはある種の作法がありまして、まず「後ろ手に手を組め!」次に「足は肩幅!」「歯を食いしばれ!」と来ます。
それで、父が平手を上げます。そのまま頬を張られると思ったらまだ甘い。ピクッと手を挙げて、普通本能で逃げるでしょ。それが「何で逃げるか!」とまた1回怒鳴られて一発来ます。小学校の子供にフェイントかよ!!逃げるのが悪い理由が仰天もの。
「俺は鼓膜の破れないたたき方を知ってるんだ!逃げるな!」だから逃げる僕が悪いのです。私、妹、弟とビンビンビンと3回、反対からもう一方の頬を叩かれるわけです。その後、涙目でにらむと父は母に「こいつちょっと撫でてやったら泣いてやがる。情けねえ!」と話すわけです。その得意げな話し方と言ったら、やっぱりただのいじめなんだと本気で思いました。
母はその時いつも全く助けてはくれません。きっと私と同じく父が恐かったんだと思います。ビンタは愛でしょうか?やっぱり虐待って言うんじゃないかなー?でもその頃テレビでは星飛馬少年がビンタされてましたね。あんなのは楽です。いきなり飛んでくるだけなんだもの。
ただ父が偉いのはお膳をひっくり返すことはしませんでした。食べ物は大事です。

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「これからまくタネ」 15
「スパルタ教育」

周りの友達の家は凄く平和そうです。
毎日怒鳴られっぱなしの中で、私は何のためにこの家に生まれてきたのか。なんでこんなに怒られるのかと答えのない毎日を送っている中で、ある時父の本棚を眺めていると「スパルタ教育」というタイトルの本が目にとまりました。現在都知事の石原慎太郎さんの本です。
昔スパルタという戦術に長けた国があって、成人に達した証に隣の町に略奪に向かう習わしになっていたとかそんな内容だったと思います。中には父の行いを肯定するような事がずらずらと書かれていて、こうやって怒られ続けると僕も偉い人になるのかなんて考えようとしたりしましたがあんまり楽しくない人生だよなー。一度目を通しただけでくたびれてしまいました。
そうこうしているうちに怒られているときに安心していられる非難場所がだんだん出来上がって来ました。一番辛いときに潜む場所だからすごく快適な場所にしなきゃ。「心の避難場所」とは今になって付けた名前で、当時小学生の私が意識的に作った訳じゃありませんから、その時、中に入っているという意識すら無かったと思います。
もちろん本当に心の中に「部屋」がある分けじゃなくて実際の状況からちょっと焦点をはずして人ごとみたいに思えるような術を身につけてきたという意味です。あたかもその場に居ないような感じになってきて、その後は頭で楽しいことでも考えていると耳からも何も聞こえてないようなふうになれるんですね。脳の働きは大したものです。というか外からの情報を処理しているのは脳なんだから出来て当然という気もします。
実はこれが後で父母らにとって「脳腫瘍」の診断などという大変な思いをする原因になります。

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